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【スターメディア通信】 2008.2.29.第28号
T. ― プロジェクト・ハインドサイト出版物より ≪連載第11回≫ ―
  著者:Antiochus of Athens
  書名:The Thesaurus

U. エヌマ・アヌ・エンリル(The Enuma Anu enlil) タブレット 57 = Ach,Isht.23 

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T. 著者:Antiochus of Athens
  書名:The Thesaurus
      Project Hindsight Greek Track Volume II-B
  訳者:Robert Schmidt 編者:Robert Hand
  出版社:The Golden Hind Press 1993年 Copy Right:Robert Schmidt
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 シソーラスが書かれたのは2世紀、プトレマイオス(100?-170?)のすぐ後です。

 アンティオコスは占星術の著者の中では、最も重要で影響力のあった人物の一人です。シソーラスは、たいへん有益な情報を残しています。惜しいのは、シソーラスが一部分しか現存していないことです。編者によると、もしも完全な状態でシソーラスが残っていたとすれば、その規模はおそらくWilsonの辞書かNicholas De Voreの辞書と同じくらいのものだったのではないか、とのことです。

■ 古代占星術の影響
 アリストテレス(紀元前4世紀)のようなギリシャ哲学の影響が見られます。

 エジプト占星術のタームをプトレマイオスが認めなかったことがp.15に書かれていますが、当時ギリシャ占星術を扱っていた人たちがエジプトやバビロニアの占星術をどのように見ていたのか、うかがうことができます。

 獣帯を星座ごとに12分割する方法とは別に、古代の人は獣帯を36に等分割してデーカンと名づけていたとアンティオコスはいいます。現代でも知られているデーカンやフェイスのことです。アンティオコスは、一例として各デーカンに太陽が位置したときの解釈を紹介(p.11-14)しています。これは、Teucronというバビロニア人の書いたリストを元にしています。

■ タームの重視
 17世紀のウィリアム・リリーは、Christian Astrologyの中で度々タームを重視するよう指摘していますが、タームを重視する考えはシソーラスと共通点が見られます。

■ なぜおひつじ(Aries)が最初のサインなのか
 12星座の中で、なぜおひつじが最初のサインなのか、アンティオコスは冒頭で二つの理由を紹介しています。

 一つは古代の人々が、12のサインを人の身体の部位に当てはめたというもの。おひつじが頭部、おうしが首、という順番で、魚座の足で終わっています。

 もう一つは、当時の熱帯地方では、毎年太陽がおひつじに移動する春になると年齢を数える習慣があったため。そのようなわけで、春は乳児、夏は青年、秋は中年、冬は老年期とされている、とまとめています。


※本書はAnonymous of 379 のThe Treatise on the Bright Fixed Stars とセットで出版販売されたものです。当店の書籍リストでは著者名Anonymous of 379に登録されています。

※プロジェクト・ハインドサイト出版物より≪連載第10回≫は、スターメディア通信22号(2006年9月)で取り扱いました。

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U. エヌマ・アヌ・エンリル(The Enuma Anu enlil) タブレット 57 = Ach,Isht.23
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 エヌマ・アヌ・エンリルは、70のタブレット(粘土板)から成り、7000に及ぶ天体観測を元にした予兆が書かれています。2007年現在、全体のわずか30%までしか翻訳されていないそうです。

 現在、アッシリア研究者の間では、エヌマ・アヌ・エンリルに書かれているものは紀元前15-10世紀頃のものという主張が主流です。

 しかし、ルーメン・コーレブはThe Babylonian Sky Observer Volume 2で太陽の予兆が書かれたタブレット24(翻訳済み)には、紀元前2150年の記録が書かれていると指摘しています。

 この他、エヌマ・アヌ・エンリルにはシュメールの作品リストが記載されている箇所があるとのことで、このあたりのことを、バビロニア占星術を研究しているDavid BrownとKoch-Westenholzが指摘しているそうです。

 ルーメン・コーレブがこれまで誰も翻訳しなかったタブレット 57 Omens with constellations(representing planets).をアッカド語から英語に翻訳して、The Babylonian Sky Observer Volume 2に発表しています。

参考文献
The Babylonian Sky Observer Volue2
September, 2007.
The Bulletin of the "Placidus Research Center"
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★☆★ 編集後記 ★☆★
・ シソーラスを初めて手にしたのは7-8年前だと思うのですが、当時パラパラと読んだのと違い、今回は最初から最後まで精読しました。いろんな時代の占星術の情報の断片が出ていたので、たいへん興味深かったです。

・ まだ寒い日が続いていますが、皆さま、どうぞ健やかにお過ごしください。
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◆次号第29号は2008年4-5月頃にお届けする予定です。◆
 それまでにメールが発行される場合は、臨時増刊号になります。
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スターメディア通信 2008.2.29.第28号 
発行責任者 森谷リリ子
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